久々の乗船(満澤 巨彦編)

写真1:神戸港に着岸している「新青丸」(2025年3月撮影).JPG写真2:潮岬沖に沈む夕陽(2025年3月撮影).JPG写真3:「新青丸」のブリッジからの眺め(2025年3月撮影).JPG写真4:ブリッジに祀られている金比羅さん(2025年3月撮影).JPG
久しぶりにJAMSTECの調査船<新青丸>に乗船なさった満澤氏。南海トラフに設置されている地震や津波などの観測機器の整備が目的の航海だったそうです。水深4500mまで潜ることができる無人探査機による海底に設置してある機器<ハイパードルフィン>の整備が目的です。
「私の乗船は8日ほどだったのですが、2年ぶり、さらに春先の天候の変化が激しかったこともあり、最初の2~3日ぐらいは船酔いで辛い中、船上でいろいろな作業をすることになりました。何回乗っても間が空くと最初は船酔いの克服からです。<新青丸>は約1600t、海洋調査船としては中型の船なのですが、それなりに良く揺れます。」満澤氏の船酔いの克服法は、酔い止め薬は飲まず、ひたすら耐えるというやりかた。横になるとなかなか慣れないので、横になるのはできるだけ我慢して座ったり動いたりして過ごす。この時が一番つらく、最初の日は、ほとんど食事もとれずお酒も飲まず、風呂も入らずに、夜まで我慢して起きていて早めに就寝。すると翌日は少し良くなり、軽く食事ができるようになり、徐々に回復して3日目ぐらいには食事も普通にとれるようになるそう。だいたいこのパータンで船酔いを克服しているとおっしゃっていました。
さて、今回は調査研究というより<ハイパードルフィン>を使った海底の作業が主で、海底で作業するためにその道具立てを準備するのが船上での仕事。<ハイパードルフィン>のTVカメラで見ながらマニピュレーターと呼ばれる遠隔操作用のマジックハンドで、水中重量が100kg程度の観測機器を海底に設置。遠隔でも操作しやすいように様々な工夫をするそうです。海底でうまくいかないと、もう一度船上に引き上げて再調整しなければならなくなるので、1回の潜航で効率良く作業するために、<ハイパードルフィン>を操縦するパイロットといっしょに入念にセット。マニピュレーターの動線なども船上で繰り返しチェック。
「少しマニアックな話になりますが、スキューバダイビングをする方はわかると思いますが、海中では浮も沈みもしない中性浮力を維持することが重要で、持って行く機材の海中での重量にあわせて、深海用に開発された浮力材を付けたり外したりして<ハイパードルフィン>の浮力を調整。機材を付けたままの時は海中での重量変化はないのであまり問題はないのですが、例えば海底に100kgの装置を設置する時は、設置後は100kg軽くなるので無人探査機の浮力が大きくなり100kg分浮き気味になってしまいます。軽くなった分、深海で100kg分の浮力材を外せれば良いのですが、それはできないので、代わりに、深海用の浮力調整装置、深海でもつぶれないバラストタンクに100kg分の海水を深海用の油圧ポンプで注水し、海水で重くすることで、浮力を調整します。」
たとえ、万全の準備をしたとしても、天気が悪く波が高くて調査できない時は、荒天待機と言って天候回復を待つことにも・・。調査観測の目的によっては海域を変えたり、海が荒れても調査ができる音波による海底地形調査などをすることもあるそうですが、今回は目的が絞られていたので、海が荒れてすぐに回復が見込まれる時はその海域で揺れる中、待機。荒天待機中は、少しのんびりすることができるそうですが、最近は船の上でもインターネットが使えるので、陸にいるときと同じようにメールでのやりとりやオンラインで打合せに参加もできるそう。満澤氏がJAMSTECに入った頃は、沿岸では船舶電話が使えて、沖にでると陸上との連絡は衛星電話しかない状態。1日1~2回、船上での動向をFAXで連絡するぐらいだったそう。調査・作業は、海が荒れるとどうすることもできないので、海の上では神頼み。JAMSTECの船ではどの船にもブリッジに海の安全の守り神の金比羅さんが祀られているそうです。コロナ前は、調査航海の出港日の夕方、夕食前に皆でブリッジに集まり、金比羅参り。ブリッジに祭られている金比羅さんに航海の安全と成功を祈念。コロナ禍以来、ブリッジに大勢で集まることが自粛され、今回も金比羅参りはなかったそう。「海が荒れるのは、そのせいかもしれないとぼやいたりもしました。」
※尚、写真は JAMSTEC 満澤巨彦氏からお借りしました。
・写真(上左):神戸港に着岸している「新青丸」(2025/3撮影)
・写真(上右):潮岬沖に沈む夕陽(沈む瞬間に水平線緑に光るグリーンフラッシュは見えませんでした)(2025/3撮影)
・写真(下左):<新青丸>のブリッジからの眺め(2025/3撮影)
・写真(下右):ブリッジに祀られている金比羅さん(2025/3撮影)