能の楽しみ方・学び方〜羽衣(中西 紗織編)

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4.jpg今年度は「能の楽しみ方、学び方」という新たなテーマ。
能《羽衣》 作者不詳
登場人物  シテ:天女 ワキ:漁師白龍 ワキツレ:白龍の仲間の漁師
場所    駿河の国 三保の松原(現在の静岡県静岡市清水区三保)
      *「富士山世界文化遺産構成資産」(ユネスコ世界遺産2013年登録)の一つ
季節    三月    曲柄   三番目
作り物   松の木 松の枝に美しい衣(長絹という装束)がかけてある
ストーリーはいたってシンプル。ある春の日の朝、漁を終えた漁師たちが海辺に来ると、松の枝にこの世のものとは思えない美しい衣がかけてある。そこで、一人の漁師が持ち帰ろうとすると、天女が呼び止め、その羽衣がないと天に帰れないので返してほしいと訴えます。天女は羽衣を松にかけて水浴びをしていたのでした。漁師は羽衣を返すかわりに、かの有名な天人の舞を見せてくれと頼みます。天女は羽衣をまとって舞を舞い、人間界に宝を降らして、富士山の上空彼方の、天上界へ飛び去っていくのでした。
舞台となる三保の松原と富士山を望む一帯はユネスコの世界遺産に登録されています。天女がなぜここに降りてきたかというと、富士山をのぞむ松原の春の風景があまりにも美しかったからでしょう。
・注目点1:羽衣って何?能では、長絹は絹の単衣の薄物、絽とか紗という織物でできた上着のようにまとう着物のこと。ところが、乙姫様や織姫様が背中のあたりにフワッとまとっている布(披帛)をイメージしている方が多い。
・注目点2:〇なうその衣は此方のにて候 何しに召され候ぞ 〇いや疑ひは人間にあり 天に偽りなきものを
・注目点3:音。能にはいくつかのリズム様式があるが、ここでは大ノリ拍子という8拍1サイクルのリズム。