


海氷が減ると、どのようなことが起こるのかについて。海氷は日射に対する反射率が非常に大きいことが特徴。海氷がない海だと、太陽からの日射の約1割が海面で反射され、残りの9割が海の中に入って、海を温めるそう。一方、海氷があると、日射の6~7割が反射されるので、海氷がない場合よりも、海は冷やされることに。
さらに、海氷があると、大気(空気)と海の間に海氷が分布するので、断熱材のような働きをするそう。
大気と海の間での熱交換が小さくなるのです。一方、海氷が無くなると、大気と海洋の間の断熱材が無くなることになるので、大気と海洋の間の熱交換が(海氷がある時よりも)活発に・・。
何らかの要因で海氷が減る場合、海氷が減ることで日射の反射が少なくなり、海の中に入る日射が増加。日射により海は温められ、海が温かくなることで、さらに海氷が溶けて、海氷が減少。さらに海氷が減少すると、海の断熱材(断熱効果)が無くなるため、大気と海の熱交換が活発に。
「一旦海氷が減少すると、海に入る日射が増え、また、断熱効果が減少することで、加速度的に海や大気が温められることになり、海氷の減少がさらに加速するというストーリが成り立つことがあるのです。また、海氷が減少、より厳密にいうと、海氷が作られる生成量が減ると、高塩分水の形成が少なくなることがあります。というのは海水が凍って海氷ができる時、氷から塩が取り除かれることで、より、濃い塩分の水が海氷の下にできます。この濃い塩分の水は、密度が非常に重いのです。」
オホーツク海の北西陸棚域では大量の海氷ができるので、それに伴い、濃い塩分の水が排出され、冷たくて重い陸棚水がオホーツク海の中深層(深い水深)まで沈み込み、中深層の流れを駆動。ということは、オホーツク海の北西陸棚域での海氷生成量が減少すると、この重い陸棚水の形成が減少することになり、中深層の流れを弱めるということ。さらに、オホーツク海で形成される重い陸棚水は、その後、太平洋の中層(水深200~800m)に広がることが知られているので、海氷生成量の減少は、ゆくゆくは太平洋の循環や生態系にも影響を及ぼすことになるとおっしゃっていました。「オホーツク海は太平洋の心臓部と呼ばれていて、海氷の生成量が減ると心臓から送り出される血液量(すなわちオホーツク海から太平洋に送り出される重い海水)が少なくなってしまうことになるのです。」
・・・オホーツク海の海氷が減るということは海面付近の景観が変わることだけではなく、海の中深層(深い水深)にも影響が及ぶということ。また、海の生態系構造も変わるはず。通常、海氷がある場合は、海氷の裏(海氷と海水が接するあたりの氷の中)にアイスアルジーという珪藻等の植物プランクトンが付着しているそう。アイズアルジーは海氷をすり抜けた僅かな光を利用して増殖。海氷が減少して海氷が無くなると、アイスアルジーを起点とした生態系が失われることに・・・・・。
今後は、複合的な自然科学研究が必要な状況であることには間違いないと黒田氏もおっしゃっていました。
※写真・資料は黒田寛氏にお借りしたものです。
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