能の楽しみ方・学び方〜羽衣(中西 紗織編)

今年度は「能の楽しみ方、学び方」という新たなテーマ。 能《羽衣》 作者不詳 登場人物  シテ:天女 ワキ:漁師白龍 ワキツレ:白龍の仲間の漁師 場所    駿河の国 三保の松原(現在の静岡県静岡市清水区三保)       *「富士山世界文化遺産構成資産」(ユネスコ世界遺産2013年登録)の一つ 季節    三月    曲柄   三番目 作り物   松の木 松の枝に美しい衣(長絹という装束)がかけてある ストーリーはいたってシンプル。ある春の日の朝、漁を終えた漁師たちが海辺に来ると、松の枝にこの世のものとは思えない美しい衣がかけてある。そこで、一人の漁師が持ち帰ろうとすると、天女が呼び止め、その羽衣がないと天に帰れないので返してほしいと訴えます。天女は羽衣を松にかけて水浴びをしていたのでした。漁師は羽衣を返すかわりに、かの有名な天人の舞を見せてくれと頼みます。天女は羽衣をまとって舞を舞い、人間界に宝を降らして、富士山の上空彼方の、天上界へ飛び去っていくのでした。 舞台となる三保の松原と富士山を望む一帯はユネスコの世界遺産に登録されています。天女がなぜここに降りてきたかというと、富士山をのぞむ松原の春の風景があまりにも美しかったからでしょう。 ・注目点1:羽衣って何?能では、長絹は絹の単衣の薄物、絽とか紗という織物でできた上着のようにまとう着物のこと。ところが、乙姫様や織姫様が背中のあたりにフワッとまとっている布(披帛)をイメージしている方が多い。 ・注目点2:〇なうそ…

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2025.0411O.A 「縄文時代のイルカの骨」

澤田恭平さん(釧路市立博物館 学芸員) 以前、新聞に縄文時代の釧路について、日大の研究グループが調査したという記事が載っていました。 研究論文に澤田学芸員も共著として参加なさったとのことでお話しを伺いました。 日大の研究グループ、釧路市内の遺跡から出土したイルカの骨のDNA解析。でもなぜ釧路だったのでしょう?日本沿岸で先史時代のイルカ等、海棲哺乳類の骨が大量に出土していることに着目し、大規模な捕鯨遺跡で、寒冷地でDNAが残っていることが期待できたからという理由だそうです。 実際には、釧路市の東釧路貝塚(縄文前期~中期)と幣舞遺跡(縄文晩期~続縄文)3地域6地点の遺跡を調査なさったそうです。 この釧路の2遺跡ではカマイルカとイシイルカ、ネズミイルカの3種類が確認されたのです。2つの遺跡は地理的にほぼ同じ場所に位置するのですが、特にカマイルカは遺伝的に大きく異なることがわかったそうです。 東釧路貝塚でのイルカ漁は約4200年前に一度終わり、幣舞遺跡の場所で再開するまでの約1000年。 再開時には鯨の種類が遺伝的に異なるグループに入れ替わっていたということが判明。「おそらく気候変動で、イルカや他の魚介類が取れなくなり、人はやむを得ず東釧路貝塚を放棄しなければならなくなったのかも・・」と。そこには<4200年前イベント>と言われる世界規模で起こった急速な寒冷化が影響した可能性もあり、釧路も大きな影響があったのかもしれません。 この時のイルカの骨を含め、道東の土器等が一堂に見ることができ…

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