久々の乗船(満澤 巨彦編)

久しぶりにJAMSTECの調査船<新青丸>に乗船なさった満澤氏。南海トラフに設置されている地震や津波などの観測機器の整備が目的の航海だったそうです。水深4500mまで潜ることができる無人探査機による海底に設置してある機器<ハイパードルフィン>の整備が目的です。 「私の乗船は8日ほどだったのですが、2年ぶり、さらに春先の天候の変化が激しかったこともあり、最初の2~3日ぐらいは船酔いで辛い中、船上でいろいろな作業をすることになりました。何回乗っても間が空くと最初は船酔いの克服からです。<新青丸>は約1600t、海洋調査船としては中型の船なのですが、それなりに良く揺れます。」満澤氏の船酔いの克服法は、酔い止め薬は飲まず、ひたすら耐えるというやりかた。横になるとなかなか慣れないので、横になるのはできるだけ我慢して座ったり動いたりして過ごす。この時が一番つらく、最初の日は、ほとんど食事もとれずお酒も飲まず、風呂も入らずに、夜まで我慢して起きていて早めに就寝。すると翌日は少し良くなり、軽く食事ができるようになり、徐々に回復して3日目ぐらいには食事も普通にとれるようになるそう。だいたいこのパータンで船酔いを克服しているとおっしゃっていました。 さて、今回は調査研究というより<ハイパードルフィン>を使った海底の作業が主で、海底で作業するためにその道具立てを準備するのが船上での仕事。<ハイパードルフィン>のTVカメラで見ながらマニピュレーターと呼ばれる遠隔操作用のマジックハンドで、水中重量が100kg程度の…

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2025.0418O.A 「考古学に足を踏み入れたのは・・・」

小田島賢さん(厚岸町海事記念館 学芸員) 大学に入るまで考古学というものがよくわからず、高校生時代は世界史に興味があり、特に西洋と東洋との人の往来があるトルコ史に強く惹かれていたと小田島氏。 「今、思い返すと、人とのつながりや人間の営みというものが特に興味があったので、考古学を今専門分野にしているのはある意味自然な流れなのかもしれません。」 大学2年になる頃、友人から考古学研究会サークルに誘われ、夏に倶知安町で遺跡の発掘調査があることを知り、参加。発掘調査は、大学の先生や先輩、同級生と1週間宿に寝泊まりで行うもので、半ば修学旅行のような気持ちで行かれたそうですが、結果的にこの発掘調査で考古学に興味をもつこととなったそうです。 大学を卒業後、別の大学院へ進学してから、より考古学の深さに気づくことになったとおっしゃっていました。「本来は、分布論という手法で遺跡から出土した遺物の広がりを知ることで、当時の社会構造が理解できるだろうと考えていたので、それで修士論文を書きたいと思っていましたが、大学院の先生から私は基礎的な土器の研究が出来ていないということから、そのとき院で掘っていた続縄文時代の遺跡の土器と向き合うこととなるのです。」その遺跡と隣の遺跡の土器が修士論文の題材になったそう。「土器のかけらひとつひとつを観察して図面におこすことで、当時の人にとって規範となるイメージの土器があったものの、それぞれの土器には微妙な違いがあり、その背後にある土器を作った人たちが垣間見ることができます。」 …

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ヨウスコウカワイルカと絶滅(笹森 琴絵編)

「昨秋、ある取材を受けました。2006年11月に参加した中国の長江の調査についてでした。」と始まった今回の収録。20年近くを経てもまるで昨日のことのようにさまざまな出来事や調査仲間たちの表情を鮮やかに思い出している自分に驚いたとおっしゃっていました。ヨウスコウカワイルカの他にも、インダスカワイルカ、ガンジスカワイルカやアマゾンカワイルカなどもいて、総じてカワイルカと呼ばれているそう。もともとは浅い海にいたのが、川に入り込んで暮らすようになったようです。 ヨウスコウカワイルカは、揚子江、今の長江にのみ暮らしていたイルカで、体長2mほどの灰色と白の組み合わせが儚げな生き物と。。。総じてカワイルカの特徴は、目がほとんど見えず、細長いクチバシを持っていること。笹森氏、野生のヨウスコウカワイルカには会えなかったそう。漁具による大けがで中国湖北省武漢の中国科学院水生生物研究所に保護され、約20年間をそのプールで過ごした個体に1997年に逢ったそう。「チーチーと名付けられたオスでしたが、本当に美しかったです。」 当時、2006年に中国長江に6カ国の研究者らが集まり、三峡ダム直下から河口の上海までを往復。ヨウスコウカワイルカ(中国名のバイジー)という生き物を探索するのが主目的。併せて長江の水質、船舶交通量など棲息環境についてもデータを集めたそうです。結果、38日かけて、一頭も確認することができず・・・。調査団はバイジーが個体数を維持・回復する能力を喪失した状況、つまり機能的絶滅状況にあると宣言したのです。…

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